<考え方> 思いを馳せるということ

「相手の立場に立ってものを考えなさい」とはよく言いますが、少なくとも私には軽々しくそんなこと言えませーん!


<例題 ~相手の立場に立ってものを考える(基本編)~>

ヤマト運輸元会長小倉昌男氏は、2005年6月30日にカリフォルニア州ロサンゼルスの長女宅で最期を迎えられました。享年80歳。

問1:
2005年4月のある日、日本を発ちアメリカへ向かう小倉氏になって、飛行機の中で人生を回想してください。
問2:
あなたはロサンゼルス在住の小倉氏の長年の友人で、小倉氏がロサンゼルスに到着した後一緒に食事をする予定です。どのような話をしますか?


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この例題について考えるにあたって、次の2つの疑問が浮かぶと思います。ここではこれらの疑問に答える形で私なりの解説をしたいと思います。

1.どうやって解答を準備するか
2.そもそもこの問題を考えることに何の意味があるのか

それでは1.から考えていくことにします。

問1:
まず、「小倉氏になって」ですから、可能な限り小倉氏になりきることが大事です。私は当然小倉氏とは面識がありませんから、まずアクセス可能な情報として小倉氏の著書や新聞・雑誌・ネット上での記事などを読みます。小倉氏ご本人の著書やインタビュー記事といった、直接語られているものがいいでしょう。(小倉氏の著書の一つ「経営学」は私も読みましたが、これは小倉氏の功績だけでなく小倉氏の価値観や軸とされていた考え方がわかる本だと思います。)そうすると、次のようなことをはじめあらゆることがわかってきます。

・宅急便という概念およびオペレーションを一から作り上げられた。
・宅急便の路線免許取得をめぐり行政訴訟を起こすなどし規制改革に尽力された。
・95年にヤマト運輸会長職を引退されてからは、ヤマト福祉財団活動に注力された。
(もちろんこれ以外にもたくさんありますが、ここでは客観的事実について触れるのみにしたいと思います。)

また、4月中旬というのは亡くなられる1ヵ月半前であり、当時のご年齢やご体調を考えると、もう日本へ二度と帰ることない片道切符になるという覚悟をされていたのではないかと想像します。家族がアメリカにいるからとはいえ、最期が近いかもしれないという認識を持った上であえて長年住んでいた祖国を離れる決心をされるに至られた心中は察するに余りあります。著書を読み込むことにより、そのような決断をされた小倉氏の人間性がわかるかもしれません。

次に、「飛行機の中で」とありますから、飛行機の中を想像します。小倉氏くらいの方だとおそらくファーストクラスに乗られたでしょう。ビジネスクラスだったかもしれませんが、少なくともエコノミークラスではなかったと思います。ファーストクラスの座席・サービスは乗ったことがなければこれも想像するしかありません。飛行機の中という非日常空間、加えて出来ることが限られる移動中の時間となると、自宅や仕事場とは異なった環境および気持ちで人生を回想することになるでしょう。飛行機が離陸し窓から見える空や雲を眺めていたら、どんな気分になるのか…これは、今まで自分が飛行機に乗ったときの経験から肌で感じたもの、その記憶を総動員して集中力を働かせれば少しは小倉氏の気持ちに近づけるのではないかと思います。飛行機に乗ったことがない場合は…まず飛行機に乗るところから始めなければならないかもしれません。


問2:
問1について考えれば、自ずと答えは見えてくると思います。私の解答ですが、これが最後の食事になるかもしれないと考えると、まず小倉氏に会う前に自宅かどこか一人でゆっくり物事が考えられる環境で問1のような相手に思いを馳せる時間をとります。次にロサンゼルスにやってきた小倉氏に会ったら最初にねぎらいの言葉をかけ、話を聞き、問1で思いを馳せたことを思い出しながら小倉氏との会話のキャッチボールをするでしょう。本当に相手の立場に立ってものを考えるなら、これくらいのことをやらなければならないと思います。



次に2.についてですが…解がないこのような問題を考えることの意味は??

確かに決まった解答はありません…いや、あります。でも小倉氏ご本人でなければわかりませんし、小倉氏亡き今本当の答えは誰にもわかりません。当然私のような普通の人が経験したことのない世界をご存知で、数々の修羅場をくぐり抜けてこられたことでしょう。これらについては想像力を膨らませるしかありません。でも、だからといって考えることが無意味なわけではありません。リーダーシップ系の科目をケネディスクールでとったらこういう課題が出てもおかしくないかな、と思います。こういう問題について想像力を膨らませ考えを深めることが、リーダーとして必要な人生観について考えを深めるきっかけになると思うからです。

30そこそこの若造に何がわかる?確かにその通りです。でも、わからないなりに相手の気持ちや考えていることに思いを馳せることは可能です。相手のことを思い可能な限り相手の気持ちを想像する方向を向いている、そのベクトルを示すことに意味があると思います。

本当の解答は誰にもわかりませんが、「当たらずとも遠からず」的解答は、しかるべき手順を踏めば誰でもつくれると思います(これが重要)。
ケネディスクールでは、この「しかるべき手順」について考えるヒントを教えてくれるところだと思います。


最後に、ここで書いたことが役立ちそうなもっとプラクティカルな問いを投げかけてこのコラムを終わりにします。

問3:
ロサンゼルス在住のフリージャーナリストであるあなたは、小倉氏への独占インタビューをする機会を得ました。どんな質問をしますか?
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by coast_starlight | 2006-07-04 09:35 | 考え方


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