<日々の出来事> 卒業式

ハーバード大学では卒業式のことを Commencement といいます。英語で commence とは「始まる」という意味でもあります。学校の卒業とともに、新しい門出を祝う、そんな意味がこもっているのだと思います。しかし式典は8~9時間の長丁場!正直言って感慨に浸る時間よりもこれらをこなすのに精一杯で疲れを感じた時間のほうが長かったかもしれません。だって昨日は朝5時起きだったんだもん。大まかなスケジュールはというと…

07:00 ケネディスクールへ集合・クラス写真撮影
08:00 ケネディスクールからヤード(学部の校舎)まで歩く
09:45 Morning Exercise 開始
11:15 ヤードからケネディスクールに戻る
12:00 学校に再び集まり、アルファベット順に整列
12:30 卒業証書授与式開始
14:00 家族と合流し授与式会場の隣のテントでランチ
14:30 ヤードでハーバード大学の学長およびビル・ゲイツのスピーチ
      (ヤードに行かずケネディスクール内のフォーラム会場で見ることも可能)
15:30 フォーラム会場などで写真を撮ったりし、三々五々と人々が帰宅し始める
~以下適当

そんなわけで、卒業式は大まかに三部構成となっています。


0.クラス写真撮影

a0079741_545689.jpga0079741_542261.jpg他のスクールの場合はわかりませんが、ケネディスクールの場合は早朝7時に学校に集まってクラス写真を撮ることになっています。待っている人のために朝食が用意されており、朝からシャンパンも置いてあってビックリしました(さすがに飲めなかったけど)。各プログラム別に分かれて並んで写真を撮るのですが、これが結構大変!朝一番に集まってクラスメートと会ったら「おぉー!おめでとー!」とかいう歓声が上がりそこら中で人々が抱き合って話し始めたり写真を撮り始めたりするので全然写真撮影場所に人が整列せず、自分のプログラムの写真撮影が始まっているのにそれに気づかず最後の一枚を写す…というときになって慌てて気づいて並び始める人がいたりして、なかなか終わりませんでした。日本と違って列に並んだり集団で動くということに対してトレーニングされていないからなんだろうけど、「あぁ、やっぱりな」妙に納得していました。この後のヤードまで歩いていくときもしかり。上記のタイムスケジュールでヤードまで歩いて行くところから Morning Exercises 開始まで2時間近くありますが、これは他のスクールの人たちも含めて全員が揃うまでそれだけ時間がかかるということです(その間実はかなりヒマだったりします)。ちなみに、ケネディスクールからヤードまでは歩いて10分もかかりません。卒業生が4500人くらいいるからだとはいえ、朝礼などで「前にならえ」「やすめ」とかいう「訓練」をやってきた日本人だったら半分以下の時間で済むだろうな…と思いました。


1.Morning Exercise

a0079741_54813100.jpga0079741_54694.jpg卒業式第一部である Morning Exercise に入るには、卒業生本人であり卒業式の格好(ガウンとキャップのお決まりの格好…総称 regalia)をしているか、チケットを持っている必要があります。このチケットは前々回の記事でも書きましたが、各卒業生に2枚配布されるもののそれ以上必要とする人も多いため直前にはあらゆるところで「取引」が行われるようです。Morning Exerciseでは、ハーバード大学の学部・大学院全てのスクールの卒業生およびゲストが一同ヤードに集まり、卒業生代表のスピーチおよびハーバード大学学長から各スクールの Dean (校長)に対して学生に学位を授与する権限を与える宣言が行われます。この際、各スクールの名前が呼ばれたらそのスクールを代表するモノを歓声とともに卒業生が掲げるという習慣があります。例えばメディカルスクールだったら手術用の(?)ゴム手袋、教育大学院だったら教科書などで、ケネディスクールはビニール製の地球儀のボール(息を入れて膨らませるやつ)を例年使っているようです。

またこのときに行われる卒業生代表スピーチは3つあるのですが、そのうち1つが学部の成績優秀者によるラテン語スピーチです。でもネタはなぜかスターウォーズ。学校の施設やスタッフをスターウォーズのキャラクターに絡めて話すという結構笑えるスピーチで、R2D2やジェダイといった名前もちゃんとラテン語に訳していて、その箇所では皆大爆笑。そもそもそんな話を何でラテン語でしなければならないかと思いますがまあ伝統なんでしょう。このスピーチの難しいところはプログラムの中にスピーチ原稿(ラテン語およびその英語訳)が配られるので、話すべき内容を度忘れしてもその場で変えることはできないため一字一句正確に暗記していなければならないのです。しかもラテン語で。今回スピーチした彼は最初から最後まで堂々とした態度素晴らしいスピーチを行い、内容も完璧、一つも間違えていませんでした。お見事!他の二人の英語のスピーチをする人はどのようにして選ばれるかというと、この目的のために春にスピーチコンテストが行われます。学部・大学院でそれぞれ一人づつ優勝者がスピーチをするわけですが、今年はケネディスクールの学生がスピーチをすることになり少し盛り上がりました。学校ではこのコンテストの参加者のために専門の講座が開かれていたくらいです。先生もさぞうれしかったことでしょう。

最後に行われる名誉学位の授与式はかなり面白かったです。今年は(確か)7人に名誉学位が送られたのですが、そのうち2人が女性科学者でした。これは2年近く前、当時学長だったラリー・サマーズが「女性は生まれつき科学には向いていない」という旨の発言をしてそれが議論を呼び、(他にも理由はあるでしょうが)学長を辞任することになったことにも関係しているかもしれません。(何か政治的なニオイを感じるよね、と同級生と話していました。)一旦学長になると10年くらいは務めるのが普通な中でわずか5年で学長が辞めるという稀に見る出来事が起こりました。新しい学長になる7月1日(アメリカでは7月1日が日本でいう年度始まりみたいな感じ)までは以前学長をしていた人が暫定的に学長を務めることになったのですが、それ故に今年の卒業証書には学長のサインのところに学長(President)ではなく暫定学長(Interim President)という肩書きが入るという前代未聞の卒業証書となりました。ちなみにラリー・サマーズ前学長も名誉学位を授与されていました。このときは会場に一斉に歓声が沸きました。賛否両論がかなりあった人なので、ものすごく支持する人とものすごく支持しない人の両極端に分かれているみたいです。

ちなみに Morning Exercise はインターネットおよびローカル局で中継されます。中継の際は野球の実況中継みたいに司会と解説者がいて、その人たちも卒業生と同じようなガウンを着ています(実は結構笑える)。ご興味のある方はこちらの Multimedia というところで見られるので見てみてください。


2.卒業証書授与式

a0079741_5562027.jpga0079741_5535897.jpgMorning Exerciseが終わると卒業生およびその家族はぞろぞろと各スクールの校舎に戻り、その後の卒業証書授与式で一人づつ証書が渡されます。ケネディスクールの場合は校舎の裏にある公園に大テントが張られ、そこで式が行われます。卒業生はまず校舎でプログラム別およびアルファベット順に並ぶのですが、写真撮影と同様集団行動に慣れていない人たちなのですっごく時間がかかりました。列に並んだ後授与式会場まで音楽とともに「行進」していくのですが、個人的にはこの瞬間が一番ぐっとくるというか、「あぁ、卒業するんだ」という気持ちになったと思います。途中の「花道」では卒業生の家族や友人達がたくさん出迎えのため待っていて、私も去年卒業された先輩の女性がわざわざニューヨークから来られたのを見つけたときにはものすごくうれしかったです。

全員が席に座った後学長のスピーチがあり、続いて卒業生一人一人に証書が渡されます。厳密に言うと白い封筒に証書が入っているのですが、学費などの費用(term bill)を全額払っていなかったりするとその中には証書がなく「金払え」という紙が入っているそうです。私の封筒には、ちゃんと証書が入っていましたよ!


3.学長およびゲストのスピーチ

a0079741_5572543.jpg昼食の後、再びヤードで学長およびゲストによるスピーチがあります。今年のゲストはビル・ゲイツでした。今回ビル・ゲイツには名誉博士号が授与され、Dr. Gates と紹介されていました。私の両親は昼食後ヤードまで行きスピーチを聞きに行ったのですが、私は同級生と写真を撮ったりしていたこととヤードまで歩いていくのが面倒になったのでケネディスクールの校舎内で放映されるスピーチを見ることにしました。今年はアップルのスティーブ・ジョブスがスタンフォード大学の卒業式で講演することになっていてそれと比較してどうだろう、という話を前日に同級生としていたのですが、ビル・ゲイツのスピーチも悪くなかったです。マイクロソフトの経営自体からは一線を退き財団活動にほぼ専念しているからだと思いますが、地球全体における不平等にもっと関心を持つことの重要性を特に訴えていたような気がします。


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その後も学校近辺に残って同級生とおしゃべりしたり写真を撮ったりするためにしばらく残っていました。この機会を逃すと次いつ会えるかわからない、一期一会という言葉を思い出した瞬間でもありました。4時半くらいまでいたのですがすぐに家に帰る気力は出ず、しばらく学校の中庭のベンチでボケーッとしていたのですが、2年近くの留学生活を総括するにはまだしばらく時間がかかりそうです。結局日本には今月末に戻ることにしたので、これから3週間、少しづつ振り返っていきたいと思います。

でも、何はともあれ、無事卒業できて良かった!
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by coast_starlight | 2007-06-09 06:00 | 日々の出来事


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