<考え方> 割引率

割引率(discount rate)というと、企業価値などを評価する際に将来の価値を現在の価値に直すために使うレートというのが主な概念だと思いますが、人間関係における「割引率」って何でしょうか?身近な例として以下のような状況を考えてみたいと思います。


<例題> スーツケース貸してよ

昨年のある水曜の夜、携帯にある友人(アメリカ人)からメールが入っていました。3泊ほどの小旅行をするのだそうです。

「今小さいスーツケースがないから、もしいいのがあれば貸して欲しいんだけど。」

「いいよ。で、いつがいいの?」

「土曜日の朝に取りに行っていい?金曜日にメールするから。」

「わかった。おやすみ。」


金曜日の夜。自分からメールすると言っておきながらまだ連絡してこないし。私もそろそろ眠くなってきたよ…と思いメールしました。

「明日10時に学校に行かなければならないから9時45分に学校へ行く通り道の交差点で渡したいんだけどそれでもいい?」

「9時にそっちに取りに行っていい?」

「早めに欲しいんならそれでもいいけど。私の家の前に来たら電話して。下まで持っていくから(私の家は17階)。」

「わかった。」


そして、土曜日の朝。9時半頃になっても何の音沙汰もなし。9時に取りに来るって言ったじゃん!それに私の家は彼の家から歩いて5分くらいだし、大して来るのが面倒な訳ではないはず。そろそろ学校に向かわなければならないので電話(留守電)とメールにメッセージを残し、9時40分頃家を出ました。で、10時ごろ彼から返信が来ました。

「ごめん。寝すごした。今回はいいよ。また戻ったら会おう。」

さすがに「オッサン何カマしてんねん!」って一瞬心の中で思いましたよ!でも、以前の自分だったらすぐ機嫌を悪くしていたと思いますが、別に腹は立ちません。たぶんこれで友人関係が壊れることもありません。どうしてでしょう?


-----
答えは簡単。私の中で彼に対する「割引率」が高いからです。それまでの経験から「やっぱりやめる」と言ってくる可能性は高いと思っていたので、初めから話半分(あるいはそれ以下)に聞いていたからです。(ハーバードの学生だったらその辺ちゃんとしてると思ったら大間違いですよ…。)別にそれが相手に対して失礼になるということはありません。実はその水曜日の夜、メールが来る少し前まで私は彼と(夕食か飲みかは忘れましたが)一緒にいたのです。本当に困っていたのならその時に話をして帰り道に渡すということもできたので、後になってから携帯メールが来た時点で「この人思いつきで言ってるな」と少し思ったのも事実です。従って、彼にスーツケースを貸そうが貸すまいが私から見て失うものは何もありません。特に自分のスケジュールを変えることもないし(逆に言うとこれくらいの用事じゃ変えない)、私の頭の中のメモリ全体におけるこの出来事の占める比率はかなり低かったので、今振り返っても「あぁ、そんなこと言ってたな」くらいにしか思いません。ただ、彼に対する割引率はさらに上がったかもしれませんが。あんまり優しく接しすぎると調子に乗られる可能性もあるので(?)、適度なところでハッキリと「いい加減にしてよ」と言わなければいけないのかもしれませんが、その見極めが結構難しいところでもあります。(でも、相手が日本人だったら腹立てるでしょうね。)しかし割引率が高いと、何か調子のいいことを言っていても「まあいつ実現するかは不明だな」と思う反面、何かやってくれるというときはそれが実現するとうれしさも増します。

留学生活を始めてから、あまり人に対して腹を立てなくなったような気がします。というか、腹を立てても仕方がない、どのみち自分に跳ね返ってくるだけだから腹を立てるだけ損、と思うことが多いと言ったほうが正しいかもしれませんが…。もちろん、何かイヤなことを直接意図的にされた場合は腹が立つでしょうが、認識の相違や連絡の行き違いといったことについては「あ、そういうこともあるのね」と気楽に構えることができるようになりました。割引率に絡めて言うと、許容できる割引率が大幅に上がったということかもしれません。

さて、上記の例ですが、頼まれごとの受け手として真面目に考えると結構失礼です。「おいおい、自分から言っておきながら何だよ…」と腹を立てるを通り越して呆れても仕方ないところです。でも、こういう人、過去の経験からも少なくなかったです。これから留学生活を送られる方はご参考まで。
[PR]
by coast_starlight | 2007-06-23 10:22 | 考え方


<< <話のネタ> どこに軸足を置くか <話のネタ> リーダーシップを... >>