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<話のネタ> ファンドレイジング

こちらに来て思うのは、価値をお金に変える手段が多様だということです。また、その価値を提供する側からすると大した手間でもないのに他から見れば結構な値段がつく、そのことも驚きだったりします。

ケネディスクールでは政府機関やNGOなどでインターンをする学生が多く、またこれらの機関でのインターンは無給の場合が多いため、学校として一部費用を補助する制度があります。この資金を集めるため、10日ほど前学校で Student Internship Fund Auction というイベントが行われました。

<話のネタ> ファンドレイジング_a0079741_21564068.jpgオークションには silent auction と live auction の2種類があります。前者は限られた時間帯(2時間くらい)に商品が展示され、その商品の隣に置かれた紙に自分の入札価格を書いておくというものです。例えば先生のサイン入り著書だったら(先生にもよりますが)50ドルくらいから始まって20ドル刻みくらいで値段と番号を書く欄があり、希望入札価格の横に自分の番号(事前に住所などを登録すると番号がもらえる)を書いておきます。制限時間がきたときに一番高い値段の欄に番号を書いた人が落札するという仕組みです。後者は骨董品や絵画のオークションと同じで、auctioneerという人がステージの前に立ち「さあ、500ドル500ドル、500ドルほかにいませんか」という感じで値を上げていくというものです。値段の高いものや目玉商品は live auction にかけられます。オークションは落札をしてもしなくても、余興で学長が変装して踊っていたりと一種のエンターテイメントとして楽しめると思います。雰囲気を盛り上げて高い値で落札させるという意図を感じなくもなかったですが…。

ところでこのオークションで提供されるものがケネディスクールらしいというか、なかなかの希少価値を生み出しているものが多くありました。安いものから順に、学生が提供する語学レッスン(を受ける権利)や工芸品、先生のサイン入り著書、地元のお店が提供するギフト券やホテルの使用権、誰かの学生(の実家)が持つ別荘の滞在権といったものがあります。希少価値の高いものといえば、ある人(国会議員など)に一日ついて回る(shadowing)権利とか一緒に食事をする権利というものがあります。他には先生の自宅へ訪問し手料理のもてなしを受けるという権利、ギリシャの別荘、フォーラム(ケネディスクールで数日に1回行われる、世界各国の著名人を招いての講演会)最前列席1年分など、普通では手に入らないものが多いです。

今回私が少し気になっていたのが、ニューヨークのマイケル・ブルームバーグ市長と朝食を食べる+午前中ついて回る+ブルームバーグ社(経済・金融情報サービス会社)訪問の権利(2人分)というものだったのですが、値段が一気に吊り上がり全然手が出ませんでした。最終入札価格は1900ドル!確かに一人あたり1000ドルくらい払ってもおそらくそれ以上の価値があるであろう経験とはいえ、やっぱり高いよなーというのが正直な感想。入札者が学生に限定されてもこの値段だもん、そりゃ無理だよ…と思いました。ブルームバーグ市長がこのためにするべき仕事といえば秘書に(学生が訪問してくることに対して)事前のアレンジをさせることくらいで、大した労力ではないはず。一瞬にして20万円以上のお金がケネディスクールに入ってくることになります。もっとも、元々大金持ちのブルームバーグ市長からすれば個人的に寄付しても大したことないんでしょうけど…。

ちなみにこのオークションは、専門のオークション代行業者によって行われます。この業者は登録手続きや落札品の支払い手続き(現金・小切手・クレジットカードでの支払いが可能)、auctioneerをはじめとする人材の派遣などを一手に引き受けているようです。こういう業者があるということはそれだけ需要があるということなのでしょうが、専門の業者がいるということに驚きました。それだけこういう形式でのファンドレイジングがアメリカでは頻繁に行われているということだと思います。


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オークションに限らず、「(提供者が)自分の懐をあまり痛めずに相手にそれ以上の価値を提供する」形での寄付は多くの場で行われています。例えば現在学校では Toiletary Item Drive というものが行われているのですが、これはシャンプー・リンスや石鹸といったバスルーム用品を持ち寄るというものです。集められたバスルーム用品は近くのホームレスシェルターなどに寄付されます。自分用に買ったけどやっぱり使わなかったというものでもいいですし、ホテルに泊まったときについているアメニティグッズを寄付してもよいです。ホテルによく泊まる人であれば、行く度にアメニティグッズを持ち帰り、自分の手持ちの分を使うようにすればそれで価値を生み出せるようになります。そういうものをあげるのって失礼じゃないのかなー?と日本人的感覚で思ってしまったりもするのですが、このようなイベントは結構多くのところで行われるということを考えると、それなりに需要があるということだと思います。アメリカにいると、さすがに市場主義経済が進んだ国だなーというか、何でも需要と供給の関係で成り立っているなーと思わされます。
by coast_starlight | 2006-12-17 21:57 | 話のネタ


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